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「もう嫌だな…」
そう呟いても、誰かが励ましてくれる訳でもなかった。
大きな川、一級河川と呼ばれるその川のほとりで、紗奈はひとり体操座りをしていた。
この川の名前なんて知らない。
けど、紗奈はこの川が好きだった。
「いつもここに居るよね?」
何故好きかと言うと、一級河川ということもあり、川幅が広いからだ。
今日みたいな天気良い夕方には、川がキラキラ輝いて、全てを忘れられるような気持ちになるのだ。
「…ねぇ、聞いてる?」
「……」
「え、無視してる?」
「…え?」
声が聞こえ、川に合わせていた目線を上にあげると、見知らぬ男性がいた。
「……」
「……」
「…え、誰ですか?」
しばらく沈黙が続いた後、私は尋ねた。
だって、全然知らない人がたってるのだ。
整った顔立ちに、紺色のスーツを身につけている。
若いのに、かなり高そうなスーツ。
私とは住む世界が違うと一瞬で分かった。
「俺は、ミナト。」
ミナトは自己紹介しながら隣に座った。
川を眺めながら、私と同じように体操座りをする。
「……え、ミナト?」
「うん。」
「…だれ?」
そういうと、ミナトは大爆笑した。
「だれって、ミナトだよ、知らないと思うけど」
そう言いながら、ミナトはずっと笑っている。
知らないと思うのなら、もっとちゃんとした自己紹介をして頂きたい。
笑っているミナトがなんだか許せなくて、私はその場を立ち去ろうと立ち上がった。
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