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しかし、僕はその性格を嫌っているわけではないのだ。僕はどちらかといえば几帳面なほうで、ずぼらな彼女と几帳面な僕が共存すると案外うまく生活できる。
同棲し始めた頃は、そのことで日常茶飯事的に喧嘩が起きていた。今ではお互いが妥協しあって、許しあえる関係になったから以前と比べると衝突が格段に減った。
洗練されたスタイリッシュな服装に着替えて、元の素肌を活かすような薄化粧、7分後そこにいるのは大あくびをしていた人とは別人のような大人の女性。玄関で「いってらっしゃい」、「行ってきます」と挨拶を交わすまでが僕の朝のルーティンである。
ガチャンと音を立てて閉まったドアの前で思いを馳せる。先月のプロポーズのことだ。我ながら無計画なプロポーズだったと笑ってしまう。いつもどこかに出かけるにしても、しっかりと計画を立てる僕だから、あの日の出来事はイレギュラーそのものだった。
桜並木の名所に日帰りで出かけた帰り、地方であるその場所は交通機関が不便で僕たちは一時間に三本のバスを待っていた。「また来たいね」とか他愛ない話をしながら。
ときおり過ぎる沈黙さえも心地が良くて、将来隣にいるのが彼女以外にあり得ないと思ったんだ。春風に心を解かれたように言葉はほろほろと流れ出した。
婚約指輪もない、夜景のように特段綺麗な場所でもない。広がるのはのどかな田園風景と夕映えの景色。遠くから烏の鳴く声が聞こえる。僕たちの間にあるのは、そんなささやかな幸せ。
意識を現実に戻して、洗い物を片付け、洗濯物を干す。僕の職場はマンションから近い距離にあるから出勤するのは比較的、遅い時間で大丈夫。ぽかぽかと暖かい光、鳥のさえずり、新緑生い茂る街路樹。
君と見る世界はこんなにも美しい。
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