「ぼくはくま」

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「ぼくはくま」

 ぼくはくま。名前はたぶんない。お父さんとお母さんも既に死んじゃってるし。  で、ぼくは今、山から下りて、街?に来ている。早い時間だからか分からないけど、人間という存在には会っていない。お母さんからずいぶん人間には注意しなさいって言われていたっけ。  適当に道を進んでいくと、でっかい建物が見えてきた。ぼくの体の何個分だろう。あっ、歩き回ったら大きさが何となく分かるかな。どこか入るところ入るところ……。あっ、あそこから入れそう。誰もいなさそうだし、こっそりとこっそりと。  んー、真っ暗だー。んっ、でもよく見ると、なんか箱がいっぱいあるー。でも食べ物はなさそう。残念。んー、ここからさっきの建物には行けなさそう。もう出ようかな……。えーと、どこから入ってきたっけ。あ、あそこだ。光が出てる。あれ? 扉がしまっていく……。あっ、閉じちゃった。んー、仕方ない、また開くまで待ってよう。  んー、暇。暇すぎる。この部屋なにもないし。いつ出られるのかな……。うーん。隅っこの方に行って寝ようかな。その方が落ち着くし。目が覚めたら、扉も開いてるかもしれないし。  うっ、うーん! よく寝たよく寝た。ここ、寝床にいいかも。でも早くいつもの寝床に行って寝たいなー。出してよー出してよー。んー! この壁丈夫だなぁ。どれだけ研いでも傷しかつかないよ……。  あれ? なにか音が聞こえた気がする。あ、光が差してる。誰かが開けてくれたのかな? あれ……なんか僕たちと体が違う……。あれが人間かな。なんかながーい棒みたいなの持ってるけど、あれで僕をつつこうとしてるのかな。ぼくはそのぐらいではなんともないよー。がおー!  「バン!」  わぁ! 大きな音を出さないでよ。びっくりした……。あれ、なんかお腹が痛い……。血が出てる……。どうして……。  「バン!」    痛い痛い痛い……。なんでこんなことするの……。ぼく何か悪いことしたのかな……。  「バン!」  あれ、何か寒くなってきた……。痛いのもどこかにいってくれて良かった……。あ、光も見えてきた。よかったー。外に出れたんだ。んっ、あそこにいるのは——お母さんとお父さんだ——。良かった……また会えて……。    
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