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和真はちらりと時計を見て
「もうすぐ3時か……」
そう言って、んー、っと伸びをする。
とたんにイタタと首を押さえた。
「気をつけろって、むち打ちなんだから」
「うっかりすると忘れちゃうんですよ」
言いながら涙目になって、首をなで回す。
それからすぐ和真は立ち上がって、着替えます、と
一言 断って部屋に入っていった。
帰る準備なんだなと、感じて柊生も席を立つ。
和真がもともと着てきた服に着替えて、しっかりと
上着を着こんで出てくると、柊生もジャケットを来て
待っていた。
「帰るか?」
柊生に聞かれて、和真は黙って頷いた。
「これ、ありがとうございます」
そう言って丁寧に畳まれたスウェットを差し出した
「洗濯もしないですみません…」
「そんなの気にするな、送るよ」
和真は でも、と遠慮しようとして、それをやめて
ありがとうございます、とお礼で返した。
マンションのエントランスを出ると、車まわすから
ここで待ってて、と言われ和真は一人でエントランス
前の階段に座った。
あらためてマンションを眺めてみる。
昨晩は暗かったし余裕もなくて外観まで意識が
回らなかったけど。比較的新しそうな綺麗なマンション
だった。階数は高くないが、家賃は高そうだ。
ほどなく和真の前にグレーに近いカーキ色のMINIが
止まった。すぐに柊生が降りて、当たり前のように
助手席のドアを開けて
「乗って」
言いながら手招きしている。
和真は昨日と車が変わっていることに驚いたが
柊生を待たせないよう、慌てて車に乗り込んだ。
「昨日と車違うんですね」
「あー あれは仕事用かな、普段はこっち」
和真はへぇ~と羨ましそうに車内をキョロキョロ
見回した。
「こっちの方が好きそうだね」
「ん~ まぁそうかな、正直 詳しくないから
よくわかんないです」
和真が子供みたいに笑って言った。
柊生も、実は俺もあんまりこだわりないんだ
と笑った。
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