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免許証に書かれた住所だけを頼りに走ったら
また迷いそうだから、今日はウチに泊まれと言われて
悩んだものの、家まで送らせるのは申し訳なくもあり
実際体調が最悪で、アレコレ言い合うのも面倒で
すべて柊生に任せてしまったのだ。
「ご迷惑おかけして、すみません…」
その時 和真の脇でピピと体温計が鳴った。
柊生がどれ?と体温計を受け取って見る。
「37.6か だいぶ下がったね」
「ありがとうございます」
「なんか食べれそう?」
「…ビミョーです」
「だろうね、でも何か胃にいれといた方がいいし
果物くらいなら?」
「…いただきます」
じゃぁ用意してくる、そう言って柊生は満足げに
微笑んで部屋を出ていった。
和真はあらためて部屋の中を見まわす。
10畳程の部屋にセミダブルのベッドと
壁に備え付けられた本だなとデスクだけがある
殺風景な部屋だった。
和真は 体を気づかいながらゆっくり立ち上がって
閉じられていたカーテンを開けた。
ー そういえば佐倉さんはどこで寝たんだろう?
一緒にベッドに入った記憶はない。
和真は気になって部屋を出た。
寝室を出るとそこは広くて明るいリビングだった。
置かれた家具すべてが、ナチュラルで暖かい
素材感のダークブラウンでまとまっていて
まるでショールームみたいに綺麗な部屋だった。
対面式のキッチンの向こうで 柊生がせっせと果物を
切っている。
「トイレ?ここ出て右だよ」
言われてみればトイレ行きたいな、と
とりあえず、トイレに向かった。
トイレから出ると柊生が洗面所で何かを
ガサガサ漁っている。
「体調大丈夫ならシャワー浴びる?」
「え!?」
和真は驚いて声が裏返ってしまった。
「…そんなに驚かなくても… あ、もしかして俺に
襲われるとか思ってる?」
柊生は意地悪く笑って、和真の顔をのぞきこんだ。
「違っ…っていうか近い!」
和真が飛び退くと、柊生は本当に面白そうに声を
たてて笑う。
「あのさぁ襲うんだったら、とっくに襲ってるから!
心配しなくても、体調の悪いヤツを無理矢理
やっちゃうほど欲求不満じゃないよ
発情期のΩ相手でもね」
ー それもそうだ…。自意識過剰で恥ずかしい…
「シャワー使うならコレ、タオルと着替えな」
柊生は和真の返事も聞かず、持っていた物を置いて
さっさと出ていってしまった。
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