2193人が本棚に入れています
本棚に追加
ひとくちサイズにカットされた、少々不格好な
フルーツを、パクパク 口に運ぶ様子は、何だか
小動物のようで、柊生は頭を撫でたくなるような
衝動にかられた。
「うまい?」
「めっちゃ うまい。サッパリしてて…」
「よかった」
あんまり柊生がじっと見るので、和真はちょっと
居心地が悪くなる。
「…そんなに見られてると 食べにくいんですけど」
苦笑しながら言うと、柊生はゴメンと言って慌てて
目をそらす。気のせいか耳が赤くなっていた。
それを見て和真の方まで顔が熱くなった。
「佐倉さん恋人とかいないんですか?」
空気を変えようと咄嗟に思い付いた事を口走る。
「今は いないねぇ」
「まぁ、いたら発情中のΩを家に連れ込んだり
出来ないよな~とは思ったけど…
イケメンでお金もあって性格も良くて
何でいないんすか?」
「色々あって、ちょっと恋愛恐怖症っていうか、、
あ…そういえば抑制剤って飲んだ?」
「さっき起きた時飲みました」
それを聞いて柊生が、そうか…と何か考え込むように
顎に手をやる。
「まさか…まだ何か感じマス?」
「うーん、、体調のせいなのかな?
大崎も一度バース科 受診した方がいいって
言ってたよ」
「そうっすね…」
和真は言いながら、ため息まじりに両手で顔を覆った。
口にはできなかったが、思ったことはひとつだ。
ー また金がかかる…。
「とりあえず 今月はもう後2,3日で終わるんで
帰ったら家で大人しくしときます。
ちょうど無職だし」
和真はヘラっと笑って最後のイチゴを口に投げ込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!