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7. 逃 亡
柊生はマンションを出てゆっくり散歩でもするように
コンビニに向かった。
本当は出て数メートルも歩けば着いてしまう所に
コンビニはある。でも、その店には入らず、特に
目的の店も決めずにブラブラ歩いた。
12月の晴れた空。今日は気温が1ヶ月戻ったような
暖かさ。薄手のジャケット1枚を羽織っただけでも
寒さは感じない。乾いた空気が心地良かった。
時折吹いてくる風がほどよく冷たくて、良からぬ
感情も吹き飛ばしてくれた。
ラット状態でやらなかったのなんて初めてだ…。
我ながら大人になったな、などと考えて
一人で笑ってしまう。
本当はもう一晩…せめて熱が下がって落ち着くまで
家に引きとめたかったけれど、さっきの事もあるし
きっと今日は帰ると言って譲らないだろう。
柊生自身も正直、自信がなくなっていた。
これだけ長い時間ひとつ屋根の下にいて
その気になればいつだって、力ずくで自分の物に
できる。きっと発情期に陥ってる和真はそれほど
抵抗もできず、本能に従うだろう。
何がきっかけになってスイッチが入るか分からない。
ー 送るなら暗くなる前がいいだろう。
抑制剤を飲んで落ち着いたとしても
あまり出歩かせない方がいいかもしれない…。
2,3日家で大人しくすると言ってたし
家を出なくても過ごせるよう食料も買って
持たせよう…。
そんな事を考えながら結局、1時間ほどかけて
買い物をして家に戻った。
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