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ー 殺した?
一瞬本気でそう思った。
ー とにかく救急車?警察?
連絡しなければ!
そう思って携帯を探す。
胸ポケットやズボンのポケットを探ってみたが無い。
動転しているせいか助手席に投げ出されている
携帯を見つけることができない。
もう一度原付バイクの方を見ると
小柄な少年が微かに動くのが見えたが
暗さと、彼の被っているメットのせいで
表情までは見えない。
ー よかった意識はありそうだ!
そう思った柊生は外に飛び出して
バイクの少年にかけよった。
「大丈夫ですか!?すみません よく見てなくてっ」
「… たぶん」
少年は柊生を一瞬だけにらんで
イタタ 、、と呟きながら立ち上がろうとした。
柊生は咄嗟に 手を貸そうと、少年の肩をそっと
支えた。
その時
微かに甘い香りが 漂う。
ー !…この香り…ひょっとしてこの子…。
柊生が感じとった事を 少年も気づいたのか
「大丈夫ですよ 歩けますっ!」
そう言って急に慌てたように柊生から身をひくと
道路の真ん中に転がっている原付に向かって
フラフラと歩いて行く。
「あ、俺がやるから!」
柊生はそう言って少年を手振りで止めて
彼の代わりにバイクを起こして路肩に寄せた。
「今救急車と警察に連絡するから!」
急いで車に戻ろうとする柊生を見て
突然 少年が慌てて叫ぶ。
「あ、あの…大丈夫です!
警察も救急車も!」
「え?」
「本当 大丈夫なんで…」
言いながらバイクを動かそうとするので
柊生は慌ててそれを止めた。
「いや、大怪我してるかもしれないし
そういうわけにはいかないよ
バイクだって弁償しなきゃ…」
「いや、これ中古なんで!
もともとボロいんで…」
先ほど柊生を睨み付けた態度から一変して
急に腰が低くなる少年を、柊生は訝しげに見つめた。
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