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和真の手が背中に回り、柊生にぎゅっと
しがみついてきて、その手の強さがΩの欲求を
伝えてくる。
初めて会ったとき、助手席で体を固くして警戒心を
丸出しにしていた和真と同じ人物とは思えない。
これは和真であって、和真ではないんだな、と思う。
ヒートとラットが見せる夢のように。
ここで獣のように肌を重ねて、
明日になったら全て発情期のせいにして
お互い無かったことにするのだろうか?
そうして出会う前の日常に
二人、戻っていくのだろうか?
頭の片隅に追いやっていた言葉が柊生を責める。
柊生くんは、あの子と
それ以上の関係になりたいの?
「大丈夫だよ」
ふいに和真が腕の中でつぶやいた。
「心配しなくても、1度寝たからって面倒な関係を
せまったりしないよ」
考えていた事が見透かされたような言葉に
胸の奥がザワついて、柊生の中の何かが弾けた。
和真の肩を掴んで体を引き離す。
「俺はするよ」
「…? 何?」
「面倒な関係を迫るってヤツ?」
和真は柊生の言葉の意味を理解できずに
眉を寄せた。
「とりあえず 必要な荷物まとめて
俺んちに帰ろう
電気つかないんじゃ寒くて」
そう言って笑った。
「…… 行ってどうするの?」
「さぁ? 軟禁かな?」
その言葉に、さすがに和真も驚いて後ろに下がった。
「言っとくけど覚悟するのはそっちだからな
1度寝たら終わりなんて、俺は思えない
他に特別な相手がいるなら…今のうち…」
「そんなの いない」
和真は即座に答えた。
それだけは疑われたくなかった。
なぜそう思ったのか?どんな思いがそうさせたのか
今はまだ考えるには至らなかったけれど。
その言葉に柊生はホッと力を抜いて微笑んだ。
「じゃぁ 行こうか」
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