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ー 何だ? 何かヤバイ薬でも持ってるのか?
強盗でもやらかして逃げてる途中とか?
当たり屋だった、とか? まさかな。
そんな想像をしてたら
先ほどまでの震えはすっかり治まり
いつものように 頭も回りはじめた。
「申し訳ないけど、後でトラブルになったら
困るんだ。君もそうでしょ?
第三者を入れて話さないと…
心配しなくても、今回はこちらの不注意だから…」
言いながら車のドアを開き携帯を探す
今度はあっさり見つかった。
「とりあえず警察に…」
携帯を操作しようとした柊生の腕を
少年が突然グッと掴んできた。
「俺 Ωなんです!」
突然の告白に柊生は目をまるくした。
「今ちょうど…発情期で!
もちろん抑制剤は飲んでるけど…
警察にバレたら免停になるかも…!」
柊生は、なるほどと小さくうなずく。
Ω性の者は発情期中 注意力が散漫になり衝動性も
強くなる。
抑制剤の効果は人それぞれで、副作用も
眠くなる、吐き気を覚える、頭痛がするなど
さまざまで、酷い時には起き上がれないほど
倦怠感を感じる者もいるという。
そんな事情から、Ω性の者は発情期間は運転を
禁止されているのだ。
「俺 最近ついてない事ばかりで…
お兄さんには関係ないだろうけど
この上 免停なんてキツすぎる…」
少年はガックリ頭を下げて
お願いします…と小さくこぼした。
まいったな…と 柊生は戸惑っていた。
同情はするが今の話を鵜呑みにしていいものか?
もともとこの事故の件で彼に何かを
請求しようとは思ってなかったから
このまま別れても問題はない。
だが、彼を帰した後
急変して病院に運ばれたりしたら?
そのまま亡くなったり、障害が残ったりしたら…?
その事で後になって通報されたり
高額な医療費を請求でもされたら
こちらの証言は信じてもらえないかもしれない。
自分に不利な状況にしかならない。
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