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2. ドライブ
「写真撮らせてもらうよ?」
柊生がそう確認すると、和真は覚悟を決めたように
どうぞ、と返した。
「え、23歳?10代かと思った!」
携帯で免許証を撮りながら驚いた声をあげる。
「よく言われます」
和真は淡々と答えながら、柊生から返された免許証を
バックにしまった。
「俺のも確認する?」
「じゃぁ 一応…」
柊生は免許証と一緒に名刺を渡した。
「さくら… 佐倉 しゅう」
和真も先ほどの柊生と同じように
声に出して名前を読み上げる。
「28歳?…若いのに大きな会社の役員さんなんですね」
どこか冷ややかな声で独り言のように こぼしながら
柊生に免許証を返した。
「じゃぁ、ありがとうございます」
そう言ってさっさと車を降りようとする和真を
柊生は ちょっと待って、と呼び止める。
ふりかえる和真に、まだ終わってないよと微笑んだ。
「シートベルトして」
「は?」
「友達に医者がいるから、ソイツに診てもらおう」
「いや、今もう2時ですよ!?」
「内科医だから専門外だろうけど診てもらわないより
ましだろう?でも、発情期が終わったら
早めにちゃんと整形外科も受診して」
和真の話しはスルーされ、車は勝手に動きだす。
「ちょっ! 俺の原付はっ?」
和真は窓に張りついて、暗闇にポツンと
取り残された愛車を見つめながら叫んだ。
「後でうちの者に回収させるよ
ちゃんと修理して返すから、心配しないで」
和真は何か言いたげに柊生を見ていたが
そのまま何も言わず、ため息を吐いた。
「実は俺、道に迷ってたんだ。駅までナビよろしく」
馴れ馴れしく そう言われ、和真はあんぐり口を
開けて柊生を見た。
ー 強引で、自分勝手で、
なんてαらしいαなんだっ
和真は軽くイラついたが自分の無茶な頼みを
きいてもらっている手前、嫌みも言えない…。
ありがた迷惑だが、ここは下手に出て、お礼ぐらい
言っておこう…。
「色々 すみません。
ありがとうございます…」
柊生は何も答えず路の先を見ていたけれど
どこか嬉しそうに微笑んでいた。
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