1. 最悪の日?

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1. 最悪の日?

ー 今日は朝からついてなかったな …。 和真(かずま)はスローモーションのように ゆっくりとグルグル回る世界を見ながら、 やけに冷静に、ぼんやりと朝の出来事を 思い出していた。 たまには飲みに行こうぜ!と 学生の頃から密かに思い続けている友人を いつものように友達として誘ったら あっさり断られ、あげくに恋人ができたと 上機嫌で知らされた。 いつかこんな日がくるのは覚悟してたけど…。 ガッシャーンと大きな音がすぐ近くで聞こえて ほぼ同時に車のブレーキ音が夜の静かな空に響く。 ー …今日は…? いや違う。今日だけじゃない この数ヶ月ずっとだ!良いことなんて 思い出せないほど、悪いことばかりおこってる! 一度厄払いでも行った方がいいな…。 今の状況とまったく関係ない事を 夢でも見てるようにぼんやり考えていたのは 実際は ほんの数秒だっただろう。 和真の体は、12月の空の下の 冷たいアスファルトに転がって 乗っていた原付バイクも派手な音を響かせて 倒れて数メートル先まで滑って止まった。 後方では黒塗りの高そうな国産車がゆっくり 道路の端に停車して、すぐに あわてた様子の 運転手が降りてきた。 「だ、大丈夫ですか!?」 ー 大丈夫な訳ないだろ 後ろからおもいっきりぶつけられてスッ転んで あちこち痛い!どっかから大量出血とか バキバキに骨折とか…! 絶対してる! してる… ような気がしたけれど … ? … 意外と大したことないかも … ? 自分の体を確認するように和真はゆっくりと 上半身を起こして肘や膝を見た。 所々 服は破れていたけれど少し擦りむいた程度で 大きな怪我は無さそうだ。 念のため肩や首をそっと動かしてみる ー …うん 多分 骨も折れてない! そう思ったら少しずつ頭が冷静になってきて ぶつけてきた相手に意識が向いた。 運転手は真っ青な顔で、小走りでかけてきた。 「大丈夫ですか? すみませんっよく見てなくてっ」 道路に座りこんだままの和真をオロオロ見下ろす。 和真は、無言で相手を 睨み付けた。 運転手は清潔感のある上品なスーツに身をつつんだ 20代後半に見える青年だった。
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