元カレ

1/1
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ

元カレ

彼と出会う3年前、私は心底好きな人がいた…男として、人間として…その人との体の関係は、たった2度だけだ。 だけど、会っていた時間や共有する時間は、誰よりも長かった。他愛もないどーでも良い話を1日の半分ぐらい電話やLINEで話していた。朝は仕事に行く時間に連絡があり、会社につくまで…営業に出て、お客さんのところに行くまで、資料の準備をしながら、昼休みや買い物や夕飯を作りながら…何でも話せた。 その彼は土木建設の運送業をしていて、仕事のほとんどは運搬だ。互いに仕事がてら運転するのに、お喋り…どーでも良い事を話したり、ただ繋いでるだけ…周りの声を聞いて、空間を共有するような時間。 今、歩道を歩いてた人が変なファッションだった… 前の車、なんか変な運転してる… 仕事が終わりそうにないけど、これって自分のせいじゃないよね…? この道よりすいてるとことか近道ないかな…会議に間に合うかな…? まるで、常に互いが隣にいるかのように…こんなに時間を誰より共有していても、その彼との暗黙のルールがあった… その彼からは5コールしかかけてこないから、それまでに出る…出れなければ、あとでかけ直す…もちろん、かけ直しも5コール…出なければ諦める。後からかけ直して?と言われた時と用事がある時以外は、よっぽどじゃないと私からはかけない…かけても5コールまで。当然と言って良いか分からないが、私から会いたいとか何かしら要求はしない。 きっとお気付きように…私は都合の良い便利な女だ…そして、その好きだった彼には同棲中の彼女がいる。 きっかけか分からないが…私のススメから、そんな展開になった。ある意味、私はその大好きだった彼のひと押しをした、キューピットなのだ。きっとその彼はそうは思ってないだろうけど… 過去の恋愛の話を互いにした時に、今までで忘れられない人がいるかって話になった。その人が今どうしてるか?その気持ちを伝えるのも悪くないんじゃないか?遠回りしても、ダサくても、伝えるのは自由じゃないか?って話になって…その彼と彼女は10年ぶりぐらいに再会でき、うまくいった。 私だって分かる…その彼に10年後たって、いろいろあっても、やっぱり好きだと言われたら…当然、落ちてしまう。そんなビジュアルにそんな良い男だと分かっている。 嬉しかった…本当に…好きな人が好きな人と何年たっても素直に復縁できるなんて、幸せな事だと私は、羨ましかった。 何年たっても、やっぱり私を好きだよって…きっと自分にはいない…すごいなって、未来が開ける気がした。 過去に好きだった人を何年も待って…ずっと頑張りながら待って…けっきょく迎えには来てもらえなかった。その自分には、素晴らしいと思える奇跡だと思った。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!