ここは、港町

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ここは、港町

海は静かで、太陽の光をきらきらと纏い波が揺らめいている。 潮の薫りは、まるで音のないメロディーのように、路地から路地まで流れ、海の歌をハミングしながら唄っているようだった。 ぽっかりと数曹の船を抱え浮かんでいる漁港は、観光客頼みの飲食店や土産屋にぐるりと包囲されている。 停泊中の観光船を波がゆらゆらと揺らすと港に漁船が帰還したことを告げる。周りに飛び交うカモメを引き連れて。 都心から電車やバスを乗り継いで、一時間半程で、遊びに来れるこの場所は、観光スポットとして、人気があった。 港の正面玄関とも言える魚市場とそれに併設した産直マーケットは、連日、遠方からの観光客で賑わいを見せていた。 路地に入ると現れる昭和レトロの街並みは、タイムスリップでもしたかのような懐かしき郷愁の風景を残し、観光客の間では、映えスポットとしても、人気があった。 おこぼれの魚をもらい生きる猫たちは、悠々自適に町猫として暮らし、番犬の役目を忘れた犬どもは、ひなたでのんびり、イビキをかいて寝ている。 ここに居る誰もの時間は、ゆっくりと流れる。 今日も快晴の空に、トンビが悠々と弧を描く。 港町は、平和だ。
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