第1章

75/346
前へ
/346ページ
次へ
「何か分かったか?」 敷地から出ようとしていた徳丸に、声がかけられた。 徳丸が顔を向けると、刑事の堀田がコンクリートの塀にもたれかかっていた。 「あの家政婦が言うように、被害者は大きな蛇に呑み込まれたんじゃないですかねえ」 徳丸の言に、堀田はうなずいた。 「その可能性は高いと思うんだが、疑問だらけだ。 発見当時、部屋の窓は開いていたが、そこから大きな蛇が出入りした痕跡は無い。そして、ドアから出た様子も無ければ、廊下を這いずった痕跡も無い。それに、辺り一面くまなく調べたんだが、巨大な蛇が移動した痕跡も見つからん。蛇が殺したというなら、そいつはどっから入ってどこに消えたのか。 まったく、こんな事件ばかりだ」 堀田は大きなため息をついた。 「憶測で変なこと書かんでくれよ。 この辺の住民に騒がれても困るからな」 堀田は徳丸を横目で見ながら、釘を刺した。 「へい、わかっとりやす」 徳丸は小さく頭を下げると、その場を離れた。
/346ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加