第1章

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翌日、マスコミの話題は、前日の殺人事件でもちきりだった。 テレビでは被害者である早坂の経歴や人物像にも触れられたが、報道はことごとく早坂に対して好意的なものだった。 対照的に、ネットではボロクソに書きこまれ、恨みによる犯行に違いない、という投稿がいくつか見られた。 捜査本部での会議から堀田が戻ってくると、部下の白井が息を切らせて駆け寄ってきた。 「どうした?」 「それが・・・・・・」 白井は、激しく呼吸し、すぐに答えることが出来なかった。 「早坂の死亡推定時刻頃、早坂の携帯に電話をかけてきた者がいます」 「何だと、誰なんだ!」 「はい、玉川勝正です」 「玉川・・・・・・・」 堀田の脳裏に、玉川が乗っていた車が起こした事故が浮かんだ。 堀田は、その現場検証に立ち会っていた。 「安永あかりが事故で死んだ際、早坂と玉川は同じ車に乗っていました。 そして、通話時間は21分です」 「20分以上、いったい何を話してたんだ」 「すでに玉川の方には問い合わせました。 玉川はスマートフォンを盗まれたと言ってます」 「盗まれた?妙だな。 その盗まれたスマートフォンからかけた奴がいるっていうのか」 「ええ、それで」 白井は、再び苦しそうに激しい呼吸を繰り返した。
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