Sigh……

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 それからあいつはリッチー・ブラックモアの音に出逢ってハイになり、ばたばたとバンドを作って、あっという間に近隣のJKたちに見学ツアーを組まれるほどの有名人になった。しかも、バンド三昧にしか見えなかったのに、あっさりと国立大に現役合格してしまった。真面目に学生していて浪人となり果てたこの俺は、一体なんなんだ。  ------ま、長い付き合いだよな。俺は思う。男と女なら、そろそろ友情のさなか、ハタと互いの愛情に気づく頃かも知れない。  「つまんねぇハナシ」  俺はひとりごちた。それから、発展ギャルたちの俺らにまつわる噂話を思い出して、慌ててブンブンと首を振った。早いとこAにはスペシャルな女を見つけてもらわねば。あいつはどんな女と付き合っても長続きしないのだ。あれだけモテまくっているくせに妙にストイックなせいで、女の方から見放されるらしい。その都度ぶーたれるあいつを慰めるのにはもう飽きた。せっかく俺が------  「Y ! 」  出し抜けにAの奴が席に駆け込んで来て、俺を驚かす。  「な、なんだよ」  「見つけた、俺、絶対見つけたと思う ! 」  「おい、目的格が抜けてるぜ。んで、ビールどうしたよ ? 」  「理想の女 ! 」  「……はい ? 」  理解がついていかない俺に構わず、Aは自分の革ジャンを掴み上げた。  「俺、ちょっと移るな」  「お、おいおい……」  「じゃ、明日」  「おいって、ビール……」  噛み合わない返事をする俺を放って、Aはあっという間にいなくなってしまった。  なんだ、一体なにが起こったんだ。俺はしばし完璧に呆けてしまった。  Aの奴------Aの奴……理想の女だって ?
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