Sigh……

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 気がつくと、ジョー・エリオットがメイク・ラヴの在り方について唄っていた。俺の一番好きなロック・バラードだ。ちょっとの間、聴き入る。それからふと、我に返った。  ------やれやれ、帰るとするか。いつまでも座っていたら、あんまりありがたくないケツの病気になるかも知れないし。立ち上がって出口に向かいながらそっと視線を飛ばすと、目に痛いようなAの白いシャツをすぐに見つけた。  あいつ、極上の笑顔だ。その向かいには、ふわっとしたロングヘアの女性が座っている。顔は見えない。が、もしかしたらAより歳上っぽい、かも。なんとなく、そんな雰囲気だった。  俺はそのまま外に出た。晩夏の夜風がするりと身体を包み込む。さて、これからどうしよう。  上手くやれよ、A。俺は心のなかで呟く。あいつの方から一目惚れなんて笑っちまうけど、うまくモノにしろ。今度こそ、おまえの中身をちゃんと見てくれる女だといいな。  俺は機械的に駅を目指して足を運ぶ。気持ちのいい宵だってぇのに、ひとりとはワビしいねぇ、Yクン。Tあたりに電話してみるか ? あいつも明日のライヴを観に行くんだし。  ホントに上手くやれよ、Aよぉ。モノホンの恋人だって、みんなに紹介してやれよ。  俺は歩き続ける。駅なんか、とっくに通り越して。  翌晩、ちゃっかり特等席に招待したKさんを前に、Aが選んだオープニング曲は、度肝を抜くようなラヴ・バラードだった。 “Sigh……”
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