Sigh……

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 「Aよ ! 見た ? ラッキー♡」  「目立つよねー。タッパあるしさぁ」  「ね、尾けてこうか」  「駄目だよ、あそこ行くんじゃない ? “Mr. Nice. Guy ”。あそこのジャーマネ、18禁にめっちゃ厳しいじゃん」  「ちぇーっ、残念」    聞こえまくってるよ、オネーチャンたち。  まぁ、してみるとあやつらは18歳未満ってわけだ。ラッキーなのはこっち。こんな満員電車のなかで聞こえよがしに囀ってる女どもについて来られたりしたら、落ち着いて楽しめやしない。  「ね、声かけてみよっか」  「マジ !? キャー、あたし上ずっちゃう ! 」  おいおい、それはまずいって。声なんかかけて来んなよ、頼むから。こいつもせっかく今夜は上機嫌でいるってのに。  俺はそっと傍らのAを見遣った。女どもの会話が聞こえていないはずはないのに、素知らぬ顔で窓の外を眺めている。といっても、地下鉄の窓じゃ見えるのは端正すぎる自分の顔だけだろうが。  こんな、ため息が出るようなきれいな顔をして、こいつはなかなか気難しい。おまけにバンドなんかやってるくせに、女の子に付き纏われるのが大嫌いと来ている。せっかくこれから馴染みのロック・バーにしけ込もうって時に、不機嫌になられるのは願い下げだぜ。
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