対峙

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「……ウソだ」 低い声が地響きのように鼓膜を叩く。現実に引き戻された環はうつむく売井坂へ目を向けた。 「う、売井坂、さん……?」 胸にくっつきそうなほど頭を下げているためか。座っている環の位置ですら判断できなかった。 売井坂が今、どんな顔をしているのか、を。 静かな恐怖が環の足元をそっと撫でた。 パチッ。 どこからか。 何かが弾ける音がわずかに聞こえた。
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