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環は辺りに目を配らせる。しかし、特に変わった様子はない。
――気のせいか。
「ウソだ」
売井坂はまた言葉を発する。今度は先ほどよりもはっきりと聞こえた。それと同時に。
パチッ。パチッ。
爆ぜるような物音。空耳ではない。
何だ。この音は。
ただならぬ空気に、環はじっとりと汗をにじませる。
そう言えば、この部屋。
さっきより少し――暑い。
「ウソだ。ウソだ」
パチッ。――パチッ。パチッ。パチッ。パチッ。パチッ。パチッ。パチッ。
かすかに焦げた匂いもし始めた。
後頭部に浮かんだ汗が玉となって流れる。それは地肌を滑り――。
首筋をツーっと伝った。
「あの、売井坂さん、この部屋、さっきからおかしくあり」
「ウソだ……ウソだウソだウソだウソだ!ウソだぁああああああーーーーー!!!」
売井坂の叫びが砲撃のように打ちあがる。
その瞬間。
部屋一面が紅蓮の炎に包まれた。
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