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空は茜色に染まっている。
だだっ広い空き地に、藤崎は立っていた。
西に目を向けると灯台があり、夕日を背にしたその影が足元まで伸びる。
まただ。
映像こそ目の前に広がっているが、温度も、においも感じない。藤崎はこれが夢だと知覚していた。
もう何度も何度も同じものを見たので、もうすぐ赤羽が登場することも知っている。
「おーい」
手を振りながら近づいてくる彼女は、いつもと同じように小学生だった頃の姿をしていた。赤いランドセルを背負い、手には銀の箱を持っている。
もう戻れない、過去。
藤崎は赤羽に向かって走り出す。
と、同時に空からの大きな引力を感じる。
もう覚めてしまうのか。
いやだ。
まだ浸っていたい——。
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