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茜色の空。遠くの灯台の影が、藤崎の足元まで伸びている。
藤崎は自分の足元をシャベルで掘っていた。
「頑張って」
やはり小さい頃の赤羽がそばにいて、藤崎が穴を掘るのを応援している。
またこの夢だ。赤羽と、夕暮れの空き地で穴を掘る夢。
現実世界で赤羽に嫌われてしまった以上、もうこの夢にすがるしかなかった。
藤崎は一心不乱に穴を掘る。
膝が埋まるほどの深さになったとき、上空からの引力を感じ、急速に現実へと引き戻されていく——。
「おい、起きろよ」
藤崎は聞き覚えのある声と、肩に伝わる振動で目を覚ました。
「あか……」
そこまで言いかけて、何とか止める。前回に引き続きまたしてもミーティングで眠ってしまっていた。
「今回は止めれたな」
隣では村上が笑みを浮かべている。
「どうせまた変な夢をみてたんだろ?何の夢?」
「夕暮れの空き地で、穴を掘ってる夢……」
「なんじゃそりゃ」
村上は小さく笑った。
ミーティングには全く身が入らなかった。
頭の中は、この前の部室での出来事でいっぱいだったからだ。藤崎はため息をついた。どうやったら、赤羽の機嫌をなおせるだろうか……。
ミーティングの終わりの合図とともに、一人で教室を出た。今日は、村上とも一緒にいたくなかった。
廊下をとぼとぼと歩いていると、突然背後から声をかけられた。
「さっき、夕暮れの空き地の話、してたよね」
赤羽が藤崎と並んで歩きながら尋ねてくる。
「え?」
唐突な質問に上手く答えられない藤崎に、赤羽は質問を重ねる。
「してたでしょ?夢の話」
「え、うん。まあ……」
「約束の場所で、待ってるよ」
赤羽はそう言い残して駆け出した。
「ちょっとまって、だから、僕はなんのことか覚えてないんだって」
しかし赤羽は振り返らずに行ってしまい、藤崎の視界から消えた。
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