茜色に染まる

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 藤崎はシャベルを持って、空き地に座り込んでいた。もう少し待てば日が落ちる。  遠くの方から一つの人影が近づいてきているのが見えた。まるであの夢と同じように、手を振りながら近づいてくる。 「覚えてないんじゃなかったの?」  赤羽は口元を緩ませながらそう尋ねた。 「覚えてないよ。けど、毎日のように僕が見る夢のことを気にしていたでしょ?だから、夢にでてくるこの場所が、赤羽さんがいう約束の場所なんじゃないかって、一か八か待ってたんだよ」 「ふーん。それだけの理由で?一日中?」  藤崎はうなずく。 「なんでシャベルを持ってるの?」 「夢では穴を掘ってるんだ。だから、なんとなく」  赤羽は意味ありげに微笑を浮かべる。  日が沈みかけ、空は夢と同じ茜色に染まっていた。遠くの灯台が夕日を背にして、その先端の影がちょうど藤崎の足元を指していた。 「じゃ、掘って」 「どこを?」  赤羽は藤崎の足元を指さした。 「そこよ」  藤崎は一心不乱に穴を掘っていた。  夢とは違って、赤羽は無邪気に応援したりはしない。それでもあたたかな視線でその行為を見守っていた。  やがて、シャベルに何かがあたる感触がした。  そこには、二つの金属の箱があった。藤崎はそれに見覚えがあった。十年前の出来事が、鮮明にフラッシュバックする。
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