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ランドセルを背負った藤崎と赤羽はそれぞれ金属の箱を持っていた。
「タイムカプセル、どこに埋める?」
赤羽が尋ねる。
「目印が無くなったら困るから……」
「校舎裏の松の木は?」
藤崎は首をかしげる。
「うーん。枯れたり、切られたり、植えなおされたりしないかな」
「じゃあ、あの灯台の下とかは?」
「あそこは岩だらけだから、掘れないよ、きっと」
日が沈みかけ、空は茜色に染まる。灯台の先端の影が、藤崎の足元まで伸びる。
「そうだ、ここにしよう」
藤崎は突然そう言った。
「ここ?」
赤羽は戸惑いながら聞き返す。
「目印は、これ」
藤崎は、足元の灯台の先端の影を指さした。
「毎年この日、空がこの色になる瞬間、この影はきっと同じ場所を指す。だから十年後、この日、この時間に、またここにきて掘り返そう——」
穴を掘る藤崎を眺めながら、赤羽が尋ねる。
「藤崎は何を埋めるの?」
「ないしょ」
「けち」
二人の笑い声が茜色の空に響く。
赤羽は真剣な顔で藤崎を見つめる。
「ちゃんと、覚えていようね。十年後のこの日、この場所で、待ってるから。約束だよ」
藤崎は大きくうなずく。
「もちろん」
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