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(一)
辰巳功二は職場の同僚である千川要と一緒にチェーンの牛丼屋でビールを飲んでから別れ、バスに乗った。いくつかのバス停を過ぎた後、自宅の最寄りのバス停でバスを降りた。そして昔は貯木場だった運河を廊下から眺めることのできる古いマンションに入っていった。二階の部屋の一室の前で立ち止まり、鍵を開けて玄関ドアを開けた。そして「ただいま」と小さく言って部屋に入った。
壁掛け時計の正午の時報は二〇分も前に鳴り終わった後だった。妻の一羽は仕事で、息子の勇男は学校に行っており、家には静寂しかいなかった。
(続く)
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