落とし者（もの）

落とし者

8月10日

「昨夜、午後10時頃
東京都のマンションに、強盗が押し入り、
住んでいた末納標さん　35歳が意識不明のまま発見され、病院に搬送されましたがその後、死亡が確認されました。警察は
8月6日未明に起きた強盗殺人事件と同じ手口であることから関連性を調べています」

今日のテレビのニュース番組では
強盗殺人事件のニュースばかりをやっている。

会社員の廣島武は少し早いお盆休みで
家でくつろいでいた。

「また強盗殺人か」と呟きながら
テレビを消した。

「アイスでも買いに行くか」と
鍵とスマホと財布を持って家を出た。

コンビニからの帰り道、
武は前の人がハンカチを落としたことに
気づく。

「あの落としましたよ」と言った瞬間、
何かを嗅がされて眠らされ、目が覚めると
見覚えのない廃ビルの柱に、縛り付けられていた。

「何をするつもりですか……!」
武は前の男に問いかけた。

「あんたには今から強盗殺人をしに
行ってもらう」
男はそう言った。

「強盗殺人?　まさかあなたは…!」

「黙っていけ。行かないと命はない」

「でもどうして僕が…?
　落とし物を拾っただけですよね」

武はそう問うが、男は黙ったままだ。

「私の正体を知りたいか?
私は落とし者だ。」