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理不尽だ。
今どき何を言っているんだろう。
何度、そう思っただろうか。
しかしまだ社会に出て1年半。そんな偉そうな口を叩ける立場に、自分はいない。
それでも噛みつきたくなるのは、不器用で生真面目すぎる性格と正義感、その頑固さゆえだ。
この上司。口は達者だけれどその手には呆れるほどの自由と時間を持て余している。その手を動かしたなら、どれだけ滞っている業務が流れるのか、考えないのだろうか。
しかし、そんなことを思ったところで上司本人には言えるわけがない。私は末端の平社員だ。
悔しくてやりきれなくて飲み込んだ言葉は、腹の奥底に散り積もっていくばかり。いつか闇を纏い喰らう怪物になってしまいそうで、私は私が怖かった。
そうして、知らぬ間に足が止まっていたときだった。ガラス戸が開き、こちらを見つめる女性が、声をかけてきた。どうやら私は、店の真ん前に突っ立っていたらしい。良かったら中にどうぞ、と後ろに退き、通りを開く。
視界に飛び込んできた照明が目を射抜く。あまりの眩しさに眩暈がした。
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