スズキ・トモヤ教授の講演

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 視界が遮られて、ほとんど何も見えない中、消火器の容器を放擲した男は、講演記録担当のスタッフからカメラなどの撮影機材を奪い、床にぶつけて破損させたようだ。スタッフが男子学生を制止する悲鳴のような声が聞こえた。間もなく、当該人物が、複数の教師たちによって取り押さえられるのが音や声で分かった。  直接、消火薬剤を顔に吹き付けられたせいで息が苦しく、目も開けられない中、あまりの懐かしさに、笑いを堪えながら咳き込み、涙ぐむ自分がいた。  その時、心の中でトムが叫んだ。 「おい、仲野、辞めるな。まだ、辞めるな。生き急いで辞める必要はない。まだ間に合う。そして石川も戻ってこい」と。
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