スズキ・トモヤ教授の講演

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 僕はそんな話をして約40分間のパワーポイントも配布資料も使わない、言葉だけで紡ぎだした講演を締めくくった。  壇上にマイクを置こうとした時、一瞬、聴衆がざわついた。  聴衆と向かい合う僕の立ち位置からは見えていなかったけど、聴衆の視線は、ステージの後方の何者かの動きに惹きつけられているのがわかった。  次の瞬間、ステージの舞台袖から学生服を着たひとりの男が何かを大声で叫びながら、赤い消火器を片手に現れて、「ノズル」を演壇に立つ人物に向けると素早くピンを抜き取り、勢いよくピンク色の粉を放出した。更に、男子生徒は、ステージから飛び降りて、フロアを走り抜けながら、パイプ椅子を並べて座る教師陣に向かって、また床に座る生徒たちの方向にも「ノズル」を向け、粉を噴射し、体育館中がもうもうと舞う微細な粉の煙幕に包まれた。
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