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「なるほど。じゃあ火箱刑事、露伴泰人が通っているジムに行って、先週の水曜日に彼がジムに来たかどうかを確認してきてくれ」
左門寺の推理を鵜呑みにする菊村に、薫は刑事としてのプライドがないのかと愚痴をこぼしながらも、彼の指示に従って、薫は捜査に出掛けていった。
露伴泰人が先週の水曜日にジムにいたことは、簡単に証明された。まず、ジムに設置されていた防犯カメラが彼の姿を捉えていたし、数人のジムトレーナーも彼がジムに来たことを覚えていた。これで彼のアリバイは成立である。これは完全無欠、完璧なアリバイであった。
そのことを電話で菊村に報告した薫は、今からオフィスに戻りますと話し、電話を切った。その報せを事件の捜査本部がある凶悪犯罪課のオフィスで受けた菊村は、同じくそこへ来ていた左門寺と幸守にもその情報を共有する。
「じゃあ露伴先生が犯人じゃないことは確定だな」
幸守が安堵してそう言うと、左門寺は「それが作られたものじゃなければな」と水を差す。
「お前な、なんでそういうこと言うかな。アリバイがあったってことでいいだろうよ」
幸守の安堵していた表情は一変。彼は水を差した左門寺にそう言った。すると、左門寺は幸守の方を向いて「やだな、ジョークだよ」と言って笑った。そんな彼に「お前のは冗談に聞こえないんだよ」と幸守は言った。
「長いこと一緒に暮らしているのに僕が冗談を言っているかどうかもわからないのか?」
「俺はお前が普段何考えてんのかもわかんないっつーの」
「それは当然さ。僕と君は赤の他人だからね」
「わかってほしいのかそうじゃないのかどっちなんだよ」
幸守は呆れながら言った。
「さて______」と左門寺は言って、「事件の捜査はまた振り出しに戻ったという感じですね」と菊村に話しかけた。二件目の事件が起きてしまい、何かしらの取っ掛かりは掴めたかと幸守が左門寺に聞くと、「共通することは二つありましたよ」と彼は言った。
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