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「なるほど。それじゃあ引き続きがんばりたまえ。僕は午後から菊村警部のとこに行ってこの手紙を渡してくるよ」
「了解。合流できたら俺も行くよ」
「わかったよ。まぁ、合流するかどうかは君の好きにするといい」
そんな会話を交わし、幸守は眠気を飛ばすために体を伸ばす。背中や腰、そして肩の関節がポキポキと破裂音のような音を響かせる。「そろそろマッサージに行かないとなー」と呟く幸守に左門寺は「この事件が終わったら良いところを紹介しよう」と言った。
「あぁ、よろしく頼む」
そう言って、幸守は頭を掻きながら自室に戻る。デスクに座り、パソコンの画面に向かってため息をつく幸守は再びパソコンのキーボードをタイピングし始める。
その日の午後、左門寺は菊村尚侍警部がいる札舞市中央署の凶悪犯罪課のオフィスを訪れていた。そこには菊村警部だけではなく、火箱薫刑事もいたわけだけれど、左門寺がオフィスに入った時のその二人の雰囲気は、いつものその二人のものではなかった。特に火箱刑事の方は、いつになく左門寺に嫌悪、いや、それよりも敵対心といった方が適切かもしれない表情を向けていた。左門寺はその空気を察知して、「ん?どうやら今日はいつもよりアウェイのようだね」と言った。
「左門寺先生。私から少し話があるんですが」
「あまり良い話ではなさそうだね」
左門寺は話しかけてきた薫の顔を見て言った。
「えぇ。良い話ではありません。さぁ、菊村警部一緒に」
そう言って、薫は左門寺と、自分の近くに座る菊村を連れて取調室へと向かった。
その部屋で行なわれたのは、薫による二人への詰問であった。事の経緯は、極めて単純なものであった。
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