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「それは願望か?」「いや、目標さ______」と、二人はさらに会話を交わした。
彼の目標は、『猟奇殺人鬼を狩ること』______。
事件の捜査、そして学問に託けて人を狩ることができるのは、恐らく彼だけなのだろう。
「君はまだ寝ないのかい?」
ふと、左門寺が幸守に問いかけた。
「寝たいのは山々だけど、執筆の続きしないと」
そんなことより幸守は事件のことを考えたかったが、執筆を進めなければ契約を打ち切られ、食いっ逸れてしまう。仕事もなくなるし、信用だって失くしてしまう。幸守にとって、嫌でもやらなければならないことなのだ。左門寺は「そうか。じゃあがんばることだな。僕はもうしばらくここにいるよ」と言って、再び手紙の方に視線を落とした。
一人掛けのソファーから重い腰を上げ、「そうかい。じゃあ、またそこで寝るなよ?」と左門寺に言った。
「あぁ。気を付けるよ」
「お前はいつもそこで寝るからな。風邪引く前にやめとけ。もう寒い季節なんだから」
「あぁ、わかってるともさ。君も、あまり考え過ぎないようにな」
「ポンポン面白いネタが出てきたら考えることもしなくていいんだけどな。俺はそうじゃないから考えないといけないんだよ」
「わかってるさ。だから考えることは否定してない。考え過ぎることはやめておけと言ってるんだよ」
「へーへー。わかってるって。心配してくれてありがとうな」
そう言って、幸守は自室に戻った。
その後、幸守は朝まで執筆を続けた。時にあくびをかきながら、時にコクリコクリと居眠りしてしまいそうになりながらも、執筆を続けていたのである。彼は部屋の窓の外を見ると、だんだんと空が明るくなってきているのがわかると同時に、朝の寒さに気付いて身震いした。
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