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薫は菊村から頼まれて、今回の事件の容疑者を探すため、左門寺の周辺を調べて始めてすぐ、薫は“ある男”に行き着いた。その男の名前は、『巽貴之』______。
その男は、かつてこの町を恐怖のどん底へと突き落とした天才的犯罪者であり、猟奇的殺人犯______。元々その“巽一族”というのは、生まれながらにして犯罪者の血筋であり、かつて、遺伝子操作によって生まれた一族であるため、その頭脳はもはや異能力とも思えるほど天才的である。中でも、“巽貴之”という男は別格で、その天才的な頭脳で次々に未解決事件を引き起こし、警察を翻弄した。表向きはこの町の名家の当主として生活しながら、裏では様々な政治家や闇の組織の依頼を受け、要人暗殺を請け負ったり、自分の私利私欲のために殺人を犯したりと、この町で起きる半分の未解決事件の裏には彼がいると言われるほどであった。その男の息子である彼、左門寺究吾が、これまで隣で共に事件の捜査をしてきたのかと思うと、薫は吐き気を覚えていた。そして何よりも彼女が吐き気を覚えることは、左門寺がそんな地筋の生まれだと知りながらこれまで事件の捜査協力を依頼していた菊村尚侍警部に対してであった。
薫が机を叩き、これはどういうことなのか教えてほしいと、左門寺と菊村に詰問した。興奮状態である薫をなだめるように、菊村は「とりあえず落ち着けよ、火箱刑事」と言った。
「これが落ち着いていられますか!私たちは犯罪者の息子とずっと一緒に捜査してきたんですよ!?」
別に左門寺は騙していたわけではない。聞かれなかったから言わなかっただけだし、捜査の責任者である菊村はすべて知っている。左門寺には薫がどうしてそこまで怒っているのか理解できなかった。
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