プロローグ『ゴブリンを殺してはならぬ国』

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プロローグ『ゴブリンを殺してはならぬ国』

scene1: 「ざっと二十匹か・・・。動くのも面倒だ・・・。」 彼女は独り言のように、それでいて彼奴(きゃつ)らに言い放つかのように、ぶっきらぼうにも、さりげなくも言葉を投げるのだ。 〝カチャッ。〟 彼女は腰の細剣(さいけん)に手をかける。白き柄に白き鞘。純白ではなく、薄汚れたアッシュホワイトの(こしら)えであった。そう、彼女自身と同じくそれはー ー純白ではない、薄汚れた白。 松明(たいまつ)の灯りで照らされた、広き洞窟内。岩壁や地面の所々には、黒く変色した血の染みが見て取れた。 これまで連中に(さら)われ、陵辱(りょうじょく)された人間達の血であったか、はたまた〝(ほう)〟を破り連中の討伐に向かうも、無惨にも返り討ちに遭い、虐殺された人間達の血か。 窟内(くつない)の通路を前後に挟み込むかのように・・・そう、ゴブリンどもの群れが彼女を囲むのだ。 彼女の言葉通りその数は、ざっと二十匹。緑の肌に尖った耳に(いびつ)な目に鼻、そして口。 乱雑なる牙を剥き出しに、すでに彼女の血肉を犯し、殺し、喰らう事をイメージし(おぞま)しき呻きを上げる、最強にして最弱の(きょう)なるモンスター。 〝グリィィィッ。〟 彼女は使い込んだレザーグローブで、細剣(さいけん)の白き柄を、強くも軽く握るのだ。そう、逆手(さかて)で。
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