僕は……

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―――……そう。 戦争と死を司っておられるあのお方は。 世界からそれが絶えることがないように操作してられる……彼ら(ハルベス・ドゥツェント)は、そんなヴォーダン様の願いによって生み出された、いわば災厄の種。 彼らはただ、彼らの主である我々と平和な世界を望んでいるだけなのですが……――― 『誰よりも平和を渇望しているのに、永遠に辿り着けないように仕組まれている、なんてな。 ……滑稽すぎるだろう……むしろ、哀れだ』 フライヤは目を伏せた。 分かっている、分かっていても、彼女もまたそんな彼らの主として、彼らを導き続けねばならない……届くはずもないベルーリンの平和へと。 ―――彼らは、もう何世代にも渡り、そうやってきたのです。 その度に我々もこうして姿かたちを変えながら……彼らを操作してきた。 歴代の戦いの記憶を植え付けながら、彼らの輪廻転生を見守り続けてきた。 という目に見えない鎖で彼らを縛ってきたのです……――― 『……なるほど。 それで、自我が芽生えたドライを、進化だと』 ―――彼が落としたものは、忠誠心ではありません。 彼を縛り続ける因果律です……それでも――― 『……ああ。 それでも、だな』 フライヤは分かっていた。 因子はそのように容易いものではない。 因子は時を空間を、超えるのだ。 異世界にて生を無事に終えたとしても、ドライの魂は。 きっとまた、この世界ベルーリンに戻ってくる。 何らかの変化を伴って。 ―――因子に更なる強化を施そうとヴォーダン様がお考えになられたのでしょう。 生物は、変化に対応し進化していきますから……自らの因子を絶対的に疑ってなどいないでしょう、あのお方は――― 複雑な次元、時空が入り交じる不安定な空間にあるベルーリン。 この立地がまた、神のいたずらを可能としている。 ベルーリンを脅かす敵は、いくらでも量産出来るのだ。 『それでも……余も、ぬしも。 彼らに君臨し続けねば、ならぬのだな……』 ―――ふふ……それは、どうでしょう?――― 『何?』 ―――私は元来、支配することもされることも好みません。 ……今は、力を蓄えています。 いつか必ず。 時が訪れます……生物は、命あるものは、進化し続けているのですよ。 それはドライだけではありません。 私も……そして貴女も。――― フライヤはその声に、ニヤリと笑って頷いた。 『そう、だな……命の、反逆だ』 そのような時がくることを、切に願って。
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