374人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
だけど、開堂はすぐに戻ってきた。
「お待たせ!」
「……早くない?」
時間にして五分も経ってない。尋ねると、開堂はくしゃりと笑ってユキの膝にビニール袋を一つ置いた。
「女の子車で待たせといて外食できないだろ。テイクアウトしてきた。食べよう。バーガー二つ買ってきたけどどっちがいい?」
「え?」
「チーズバーガーと海老カツバーガー買ってきた。アレルギーとかあるか?」
ビニール袋の中を覗き込むと、紙袋が二つ。恐る恐る温かい紙袋の方を開けると、ハンバーガーが二つとポテトが入っている。
ーーどうしよう。
動きが止まる。
「ユキ、好きな方とってくれ。どっちがいい?」
開堂はもう一度尋ねた。
ユキはたっぷり時間をかけて状況を判断した。
「……本当にどちらでもいいの?」
「勿論」
「なら……海老カツ……」
「わかった。飲み物はどっちがいい? アイスコーヒーとアイスティー買ってきたけど」
「アイスティー」
これは即答。自分の物を受け取ってから、残りを返す。
開堂はチーズバーガーを取り出して、大口を開けてたった数口で食べきった。
「食べないのか?」
「もう少ししてから」
「ポテトは?」
「……お腹すいてない」
「なら俺が食べるな」
そう言うなり今度はポテト。Lサイズのポテトも、すごいスピードで開堂のお腹へと消えていく。
でも、まだだ。
「車出すぞ?」
「お願い」
車はまた本線に戻った。間違いなく朝来た道を戻ってる。
ユキはそこまで確認して初めて、ハンバーガーの包みを開けた。少し冷めてはしまったけれど、それでもほんのり温かい。一口口にすると、パンの柔らかさにカツのサクサク、海老の美味しさ、色んな物が口いっぱいに広がった。
何も言わず、一口一口ゆっくりとハンバーガーを食べ続けた。
最初のコメントを投稿しよう!