8/20

374人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
 だけど、開堂はすぐに戻ってきた。 「お待たせ!」 「……早くない?」  時間にして五分も経ってない。尋ねると、開堂はくしゃりと笑ってユキの膝にビニール袋を一つ置いた。 「女の子車で待たせといて外食できないだろ。テイクアウトしてきた。食べよう。バーガー二つ買ってきたけどどっちがいい?」 「え?」 「チーズバーガーと海老カツバーガー買ってきた。アレルギーとかあるか?」  ビニール袋の中を覗き込むと、紙袋が二つ。恐る恐る温かい紙袋の方を開けると、ハンバーガーが二つとポテトが入っている。  ーーどうしよう。  動きが止まる。 「ユキ、好きな方とってくれ。どっちがいい?」  開堂はもう一度尋ねた。  ユキはたっぷり時間をかけて状況を判断した。 「……本当にどちらでもいいの?」 「勿論」 「なら……海老カツ……」 「わかった。飲み物はどっちがいい? アイスコーヒーとアイスティー買ってきたけど」 「アイスティー」  これは即答。自分の物を受け取ってから、残りを返す。  開堂はチーズバーガーを取り出して、大口を開けてたった数口で食べきった。 「食べないのか?」 「もう少ししてから」 「ポテトは?」 「……お腹すいてない」 「なら俺が食べるな」    そう言うなり今度はポテト。Lサイズのポテトも、すごいスピードで開堂のお腹へと消えていく。  でも、まだだ。 「車出すぞ?」 「お願い」  車はまた本線に戻った。間違いなく朝来た道を戻ってる。  ユキはそこまで確認して初めて、ハンバーガーの包みを開けた。少し冷めてはしまったけれど、それでもほんのり温かい。一口口にすると、パンの柔らかさにカツのサクサク、海老の美味しさ、色んな物が口いっぱいに広がった。  何も言わず、一口一口ゆっくりとハンバーガーを食べ続けた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

374人が本棚に入れています
本棚に追加