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物資の運搬任務は比較的拘束時間も短く、難易度も低い任務だ。上は容赦なく翌日にも任務を入れてきた。
「ユキ、店の見回りをしてきなさい」
「……はい」
拒否権なんてない。空の鞄を受け取って、視線を落とした。この鞄の意味もよくわかってる。
「新入りも連れて行け」
「……わかった」
「もう車にいる筈だ」
「……ん」
店は数も多いし場所も少し離れている。早く終わらせるため、その足で出口に向かった。
外に出ると、一台の車が出入口の前に横付けされていた。
「よ」
ユキが車に乗り込めば、困ったような笑顔が返ってくる。無言で見回る先の大まかな住所が書かれたメモを渡すと、開堂も何も言わずにナビを操作した。
車はそのまま、音も僅かに動き出す。暫く走ると、開堂はまるで世間話でもするかのように口を開いた。
「今日の任務は?」
「聞いてないの?」
「ユキに従え、ついて行けとしか聞いてない」
「……何それ」
でもあいつらがやりそうな事だ。
「息がかかってる店の確認」
「平和そうな任務だな」
「……まあね。昨日のよりは危険は少ないよ」
危険はね。その言葉は出す直前で飲み込んだ。
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