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 渡された物を空の鞄に入れて、次の場所へと移動する。今度は繁華街から一本裏に入った場所にある一見するとオフィスビルのような所だ。 「待ってて」 「俺も行く」 「来ない方がいいよ?」 「行く」 「……知らないから」  止めてはみたけれど、その意志は固そうで。仕方なく一緒に扉を開くと、開堂は一歩足を踏み入れた瞬間顔を顰めた。 「いやぁーっ!」  響き渡るのは女の絶叫。 「ほら! こっち向けって!」 「あー、ほんっと、ここ! 最高だよなぁっ!」 「お願いっ、それはやめてっ」  廊下を進むと、左右から男の興奮した声や他の女の嘆願の声が押し寄せる。そして極めつけは。 「ああっ! そこっ!」 「あーっ! 出す、出すぞーっ!」 「あぁっ、あーっ!」  至る所から聞こえる煽ぎ声と独特の匂い。 「何だここは……」  開堂は呆然と呟いた。 「売春所」 「は……?」 「売春所」  だから来ない方がいいって言ったのに。心の中で呟いて、ユキは事務所の扉を開けた。 「おう」 「見回り」  事務所の中には男が三人。どいつもここが長いから、立ち上がる事もせず、各部屋につけられた監視カメラの映像に夢中。  ここには誰一人自分から体を開いている人なんていない。借金で首が回らなくなってここに連れてこられたか、軽い気持ちで体を売って、写真や動画で脅されて連れてこられたかが殆どだ。  カメラの向こうの女性達は皆、カメラの向こうで泣いているように見えた。
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