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 車はどんどん町から離れていく。高い建物がなくなって、代わりに倉庫や民家が目立つようになった。   「どこ行くの」 「いいからいいから」  いつもならこんな言葉真に受けない。攻撃されてもいいように、護身用のナイフを手に隠して身構えている頃だ。反撃は許されてる。  でも。今日はポケットのナイフに触れはしても、握ろうとは思えなかった。  車は二十分程走り続けて、やがて高台にある公園に停まった。 「降りてくれ」 「え? 用があるんじゃないの?」 「そう、ここにな」  ーーどうしよう。  ユキは足下の鞄を見下ろした。鞄の中には顧客リストと上納金。周りには人気はない。  もしここでおっさんが裏切ったら、もしここに仲間を待機させてたら、ひとたまりもない。  これを届けられなければ任務は失敗だ。失敗は許されない。  ユキが戸惑っていると、早々に車から降りた開堂が助手席の扉を開けた。 「来てみろって」 「でも……」 「あー、鞄か。なら降りなくていいからそのまま見てみろ」  開堂が指差したのは目の前にある柵の向こう側だ。 「あ……」  思わず声が漏れた。ユキの目の前には無数の光がまるで花畑のように、どこまでもどこまでも広がっていた。  淡い光はみんな住宅だろうか。一つ一つは淡くて消えそうで、でも集まるとすごく綺麗。そんな光がずっと向こうまで続いてる。そしてもっと遠くには青と白にライトアップされた東京のシンボルタワーまで見える。
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