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 弾かれるように皆が携帯を手にし、そして誰かがテレビを点けた。バーに面白くもないバラエティ番組の音声が響き渡る。そして。 〈ただいま入りました速報です。本日午後七時十分頃、東京都千代田区霞ヶ関の路上で内閣府政務官轟木佐介氏が何者かに刃物で刺され、その後死亡が確認されました。犯人は尚も逃走中です。轟木氏は建物から出たところを狙って刺されたと見られ、警察は規制線を張って犯人を捜索しています。繰り返します。犯人は尚も逃走中です。武器を所持している可能性があります。付近の方は十分注意してください〉  いきなり女性アナウンサーの声に切り替わったと思ったら、アナウンサーは確かに開堂の任務成功を告げた。その瞬間、バーは沸き立った。 「うっそ!」 「やるじゃねえか!」 「これはもう決定だな!」 「すげえ! 最速じゃねえ⁉︎」  スキンヘッドの男を除いた面々が、興奮冷めやらぬ様子で開堂を取り囲む。ユキはその光景を呆然と眺めた。  人を殺して来たのに笑えてる。  よく見れば服に返り血までついていて、手も汚れてる。それなのに笑ってる。 「正式にメンバーとして認めよう。このままユキと組みなさい」  ボスが奥から声をかけるまで、バーは喧騒に包まれ続けた。
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