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二、
正式にペアで仕事をする事になって、次の日には最初の任務を言い渡された。
「随分遠くまで行くんだな」
開堂は車に乗るなり、渡されたメモを確認して呟いた。
「……逃げる心配がないって信用されたんでしょ」
「そうか。今日の任務はどんなもんなんだ?」
「……着いたら説明する。午後三時にホテルに着くようにして」
「わかった」
ユキがシートベルトを締めると、車はゆっくり動き出した。
移り変わる景色を、ただ静かに眺め続ける。
開堂の運転は丁寧で、急発進や急ブレーキもなければ、速度超過もない。窓に身を寄せて、ずっと外を見ていられる。
「サービスエリア一度寄るか?」
「ううん、大丈夫」
「わかった」
途中の会話はそれだけ。三時間もすると、車は避暑地として人気の観光地へと入った。
肌寒くなってきたこの季節。平日はハイシーズンに比べるとだいぶ人も少ない筈だ。それでも流石は人気観光地。それなりに人出がある。
大人数の学生グループ、友達同士だろう初老の女性グループ、小さな子供二人を連れた家族、祖父母から孫までが揃った大家族。色んな人達がいるけれど、共通するのは皆笑顔な事。
お土産の紙袋を持って、ソフトクリームを食べたり道沿いの店を覗いたりしながら楽しそうに歩いてる。
隔てているのは薄い窓ガラス一枚だけなのに、まるで別世界。これが現実だ。
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