二、

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 帰りの車に乗り込んで、暫くはお互い何も話さなかった。ユキも無言で、自身の横の窓から移りゆく景色を眺めるばかり。  沈黙を破ったのはやはり開堂だ。 「……あれ、いくらあったんだ?」 「百万円入りの封筒が十二」  ユキが素っ気なく答えると、驚きの声が返ってくる。 「千二百万⁉︎ そんなに持ち歩いてたのか⁉︎」 「まあね」 「……持ち逃げしようとは思わないのか」 「……どこに逃げるのよ」  組織のやり方は全て教え込まれた。逃げようと思えば逃げ切れる。でも、その後は?  ーーどこに行けばいい?  ーー何をしたらいい?  ーーどうやって生きる?  自問しても答えは出ない。組織もそれをわかっているからこうやって大金を任せるんだ。  窓の外の人達とは世界が違いすぎる。 「そうか」  その瞬間、車は急に向きを変えた。 「ちょっと! おっさん⁉︎」 「寄り道寄り道!」  慌てて振り返ると、開堂は楽しそうに笑って車を元来た方へと走らせる。 「さっきあっちに結構人が入ってるケーキ屋があったろ?」  その笑顔があまりに陰りも何もなくて、反対する言葉も出てこない。 「……わかった」  ユキは再び座席に深く身を預けた。
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