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開堂の言うケーキ屋は、平日だというのに確かに盛況だった。可愛らしい店内で皆会話に花を咲かせ、白・黒・茶・ピンク・赤・緑・オレンジ、色鮮やかなケーキを頬張っている。誰もが笑顔で幸せそう。
「……何ここ」
自分がこんな場所にいる事が信じられなかった。
「すごい人気だな。ケーキと飲み物、何がいい?」
「そうじゃなくて、何でこんな所に来たの? 変でしょ?」
パステルカラーを基調とした店内は若い女の子ばかりだ。おしゃれをして、家族や友達、恋人と楽しそうに過ごす女の子達。場違いすぎる。
すると、開堂は不思議そうに首を傾げた。
「変じゃないだろ」
真っ直ぐな目は嘘を言っているようには見えなかった。
「それよりケーキ、何がいい?」
開堂が差し出すメニューには、数十種類のケーキの名前らしきカタカナが並ぶ。いくつかは聞いた事があるけれど、ほとんど呪文にしか見えない。
「……わからない」
「好きなやつないか?」
「……わからない」
もう一度呟くと、開堂は困ったようにメニューを自分の方向に向けた。
「なら適当に選ぶぞ? アレルギーとか苦手なものあるか?」
「……ないと思う」
「了解」
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