二、

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 開堂はそう言うと、片手で店員を呼び、慣れた様子で何やら呪文のような言葉を唱えた。  そしてやってきたのは。 「お待たせ致しました。ケーキ二種プレート、ショートケーキとオレンジショコラのムース、ダージリンのお客様?」 「彼女です」 「ありがとうございます。ではこちらがベイクドチーズケーキとエスプレッソです」 「ありがとうございます」  草花の模様が入った白いお皿に、苺ののった白い三角形のケーキと、オレンジと茶が層になった丸いケーキ。ピンク色の液体で花模様の装飾までされた、綺麗な一皿だ。 「柑橘も大丈夫だよな?」 「え?」  開堂は照れたように頬を掻く。 「いや、オレンジ頼んだからな。たまに柑橘系が苦手な子もいるだろ? ダメなら俺のと変えるけどどうする?」 「……大丈夫だと思う」  寧ろダメなわけがない。何となく確信があった。  ゆっくりとフォークに手を伸ばし、そのままゆっくりと、まずは白いケーキにフォークを刺す。その柔らかさに少し驚いて、そして口に運んでまた驚いた。 「……美味しいっ……」 「良かった! ……お、ここのほんとに美味しいな」  ユキが食べるのを見届け、自分のケーキを頬張った開堂はニカリと笑う。  でもきっと言葉の意味はわかってない。  
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