二、

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「美味しい……」  今度は茶色のケーキを一口。こっちも驚くくらい甘くて優しい味だ。 「美味しいっ……」  ユキの口からはもうその言葉しか出てこなかった。二つのケーキを交互に、味わうようにゆっくり口に運ぶ。その姿を、開堂はただ微笑って見つめ続けた。  ケーキを食べ終えて車に戻っても、会話はなかった。まだ頬の裏側はケーキの甘さを覚えていて、緩んだまま元に戻らない。頬だけでなく口元まで緩むから困り物だ。  やがて高速を半分くらい過ぎて、開堂が切り出した。 「なあ。今日買ったマンション、何に使うんだ?」  ーーきた。  ユキの人差し指がピクリと動いた。  今までならこんな質問答えなかった。だけどもういい、そう思えた。  窓の向こうに視線を向けたまま、何でもない事のように答えを紡ぐ。 「教えてもらってないけど、多分悪い物の隠し場所兼何かあった時の潜伏用」 「悪い物って何だ?」 「輸入した武器とか薬。あとは政治家や大企業の幹部を脅せるような悪いネタとかかな」
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