二、

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 悟られないようにしているつもりだろうけど、開堂が唾を飲み込んだのがわかった。声色も変わる。 「……こういう所、いくつもあるのか?」 「うん」 「どこにあるんだ?」  その問いかけに一瞬悩んだ。  答えてもいい。でも、まだ答えたくない。 「……おっさんが任務をこなして、信頼を得ていけば少しずつ教えてもらえるよ」  結局当たり障りのない事を教えた。  車は高速道路を出た。工場群まではもうそんなにかからない。この時間ももうすぐ終わりだ。 「……ユキはそういう事も全て知ってるのか?」 「……まあね。長いから」 「そうか……」  開堂はそれきり押し黙った。  窓の外が見慣れた光景ばかりになってきて、ユキも窓から身を離す。ようやく正面を見据えると、工事は目前に迫っていた。 「おっさん」 「ん?」 「……ケーキ、ありがとう。美味しかった」 「ああ。良かった」  開堂が微笑ったのと同時に、車は敷地に入った。  ユキもまた微笑み、そしてそのまま目を閉じた。この時間は終わりだ。切り替えないと。自分に言い聞かせ、目を開ける。  もういつもの無表情のユキに戻っていた。
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