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バーが賑わう時間に工場を出て、目的地に着いたのは日付が変わろうかという時間だった。辿り着いたのは山奥のゴミ処理工場。
「お、お疲れさん」
入口には嫌な笑みを浮かべた組織の男が待っている。
「……どこ?」
「中だ」
「……方法は?」
「バレなきゃいい」
「……わかった」
会話はそれだけ。ユキが中へ歩みを進めると、入れ替わるように男は走り去っていく。
「どうしたんだ?」
開堂はその後ろ姿を振り返りながら尋ねた。
「急いで山を下りるの」
「何で」
「アリバイを作るためにね」
「何の」
「見たらわかるよ」
ユキはそれだけ言うと、廃車や家電ゴミが積み重なる広場の真ん中に立ち、辺りを見回した。
深夜の山奥は薄暗くて、数メートル先のものを見るのも苦労する。今夜は月すら雲で隠れていて、頼りになるのは僅かな照明の明かりだけだ。
でも、そんな場所だから感じる事もある。奥の方から弱々しい音と独特な匂いを感じた。
「こっち」
「おい! 何があるんだ?」
同じ事は二度は答えない。見たらわかる。それだけだ。
匂いの方を辿った先にあったのは、大きなドラマ缶だ。ここまで来れば、開堂も匂いの正体に気付いたらしい。
「おい、まさかっ……」
「……処理が私達の任務」
絶句する開堂の手をとった。無理矢理ドラム缶のすぐ隣へと連れて行く。
ドラム缶の中は血の海。そしてその海の中には、血塗れの男がぐったりと沈んでいた。
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