374人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
「何、だっ……」
「……後処理が私達の仕事」
努めて冷静に吐き捨てると、開堂の体は硬直した。その時だ、ドラム缶の中で男の体が僅かにうごいた。
「おい、まだ生きてっ」
「うん。アリバイを作るためにギリギリ殺さないで行ったんでしょ」
でも、もうすぐ死ぬ。呼吸は浅く、至るところから大量に出血してる。ドラム缶に溜まった血の量を考えても、助からないのは明らかだ。
それなのに開堂は顔を歪める。
「……何も考えないで」
「え?」
「どうせ何をしても数分後には死ぬから」
考えても苦しいだけだ。
やがて男の呼吸は止まった。血の海も一度大きく波打った後、一切の動きをなくす。完全に絶命したらしい。
ユキは無言で動いた。まずはジャンバーのポケットから取り出した注射を男の首に打つ。死後硬直を遅らせる薬だ。
その後、小瓶に入った赤い液体をドラム缶の中へ、青い液体をドラム缶の周りに撒く。
そして。
「下がって」
「えっ⁉︎」
火をつけたマッチをドラム缶に投げ込んだ。その瞬間、勢いよく火柱があがる。ドラム缶はあっという間に火に飲み込まれた。
最初のコメントを投稿しよう!