二、

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 あとは待つだけ。十数分もすれば死体は判別不可能になる。 「いつも、こんな事をしてるのか……?」  開堂は呆然と呟いた。 「……まあね」 「心は痛まないのか……?」  その声は悲壮なもので、表情は見えなくても酷い顔をしているのが想像できた。 「……それ、私以外には言わない方がいいよ」  それきり会話はなくなった。辺りには人が燃える酷い匂いが蔓延し、より気持ちを滅入らせる。それでも、勢い良く燃える炎から視線を逸らす事もできなかった。    帰りの車でもお互い口を開かず、沈黙が続いた。  変わり果てた死体は、土を被せてドラム缶ごとゴミの中に隠した。これで数日間は見つからない。見つかったとしても、ユキに繋がる事はない。ユキに繋がらなければ組織に繋がる事もない。  任務完了だ。  土をかき集めた手は、払ってもどこか土っぽい。顎を乗せる事を諦めて窓に寄りかかる。 「……何でこんな所にいるんだ?」  開堂は静かに尋ねた。 「……他に行く所がなかったの」 「そんなわけないだろ? 犯罪組織なんかでは」 「それ、言わない方がいいよ」  他の人に言えば裏切者と判断されて殺される。淡々と付け足すと、開堂は眉を寄せた。 「そう言って止めるけど、上に報告しないのは何でだ?」 「……面倒なだけ」  すると、隣からごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。一拍置いて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。 「……なあ、本当はいい子なんじゃないのか? こんな事、したくないんじゃないか?」 「……そんなわけないでしょ……」  何を言うかと思えば。それ以上言葉は出てこなかった。  この日、開堂との任務で初めてどこにも寄らずに帰路についた。
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