二、

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 すぐ目の前には数台の自動販売機。その中にはお酒の自販機もある。 「おっさん」  ユキの手は開堂の服の裾に伸びた。 「何だ?」 「おっさんとなら……お酒飲みたい」  その言葉に、開堂は目を丸くした。でも途端に笑顔になる。 「寄り道して行くか」 「……そこの自販機でいい」 「寒いだろ。その辺に焼き鳥屋があったろ。そこでいいか?」 「……ん」  二人は当初の目的地のコンビニを通り越し、すぐ先にある焼き鳥屋の暖簾をくぐった。  焼き鳥屋は平日だというのに賑わっていた。若者や近くの工場で働いているのだろう男性でほとんどの席が埋まっている。  案内されたのはカウンターの端の席だった。 「飲み物は何がいい?」 「……おっさんと同じでいい」 「焼き鳥は何が好きだ?」 「……任せる」  それだけ答えると、開堂は適当に見繕って注文してくれる。だけど。 「お待たせ致しました! 生ビールとカルピスサワーです」  出てきたグラスの色は明らかに違ってる。 「おっさん?」 「そんなに飲み慣れてないならビールじゃない方がいいだろ。甘いもの嫌いじゃないみたいだし、こっちの方が飲みやすいかと思って」
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